投票するということ
いよいよ安保関連法が成立して以来、初めての国政選挙が行われます。
投票にあたり、これまでTMSNCUが学習してきた内容を
5つの視点で簡潔にまとめました。
投票選択の一助となれば幸いです。
■ 憲法
1 「立憲主義」とは何か?
立憲主義は「法によって権力を縛る」という考え方です。
そこに「個人の尊重」の価値観が含まれます。
そのため人権保障の確保のための権力分立や国民主権も
含んで立憲主義は成立しています。
2 安保関連法と憲法9条
憲法が成立して以来、9条をめぐる憲法解釈はさまざまな変更を経て、
1970年代からおおよそ自衛隊は「自衛のための必要最小限度の実力」
として存在してきました。
違憲と考えられてきました。
今回の安保関連法は、この点を変更するものであり、
という特徴を持ちます。
(第1回学習会「教えて!憲法」2015年7月27日より)
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●選挙の前に自民党の改憲案を読むことをお勧めします。(http://constitution.jimin.jp/draft/)
(https://www.youtube.com/watch?v=6TNg8xauLCY)
■ 国際情勢
3 ウエストファリアシステムの限界から生まれた「集団安全保障」
ウエストファリアシステムは「国際社会のバランスは各国家の国益を
最優先にした行動で維持されるという考え」です。
このシステムでは、軍事力が国際社会のバランス維持において
最も効果的だと考えられ、それが第一次・第二次世界大戦を
引き起こしました。
そこで国際社会が生み出したのが、1945年の国際連合憲章
第7章第51条の「集団安全保障」です。
それは、侵略国の行為に対して国際社会が連携して行動する(国連軍)
ことです。各国の自衛権は、「個別的」「集団的」ともに、
この国連による集団安全保障の枠内に置かれています。
4 紛争の多様化と「国際貢献」
1996-1999年に起きたコソボ紛争は、これまでの「国益第一主義」
とは異なる「人道的理由」によって国際社会が介入する
初めての紛争でした。これによって「積極的平和主義」が
新しい人道的介入による戦争を生み出しました。
こうした国際紛争の多様化に対応する現代国際社会のおける
安全保障の考え方は、「国益-地球的価値」と
「軍事-非軍事」の二つの対立軸で考えることができます。
現在日本における、一国平和主義「国益・非軍事」への批判は、
コスモポリタン戦争「地球的価値・軍事」の思想からのものですが、
コスモポリタン平和主義「地球的価値・非軍事」の思想の可能性も
同様に開かれているのです。
(第2回学習会「21世紀の国際社会と安全保障をめぐる対抗構想」2015年8月15日より)
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● 昨年の安保法成立で日本を守るためだけでなく、
他国のために戦うことが可能となりました。
また世界からは、日本は平和主義を捨てたと認識されています。
現政権下では、この動きは更に加速される方向性にあります。
■ 沖縄
5 沖縄の本土「復帰」と「今」
琉球・沖縄には4つの大きな時代の節目「世(ゆ)替わり」があります。
薩摩入り、琉球処分、沖縄アメリカ統治、本土復帰です。
そのすべてが外から軍隊がやってくるというものでした。
しかし、そのうち、1972年の本土復帰だけは、沖縄人「うちなーんちゅ」が
自ら望んだ転換でした。
沖縄は、日本国憲法が掲げる「平和主義」に内包されることを
望んだのです。しかしながら、アメリカ占領軍の代わりに
沖縄には自衛隊がやってきました。
また、米軍基地はその後も沖縄に置かれ続け、
在日米軍基地の74%が沖縄にあります。
6 沖縄は「捨て石」か?
なぜ沖縄に米軍基地が置かれなければならないのか?
沖縄に米軍基地を置いているのは、日本の選択であるということを
考えることが大切です。沖縄の問題は「沖縄」の問題ではなく、
また、過去の問題ではなく今の問題です。
(第3回学習会「琉球・沖縄について語り考える」 2015年9月12日より)
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● 沖縄になぜ、基地が必要なのでしょうか。
「抑止力」「基地依存経済」という虚像を捨て、自分のこととして
沖縄を考える必要があります。
自分が住んでいるところに、基地がやってくることを受け入れますか?
もし「NO」なら、沖縄に基地も「NO」のはずです。
■ 日米関係史
7 「サンフランシスコ体制」を再考する
「サンフランシスコ体制」は、1951年9月8日に調印された
サンフランシスコ講和条約と日米安全保障条約によって、
日本とアメリカとの間で形成された二国間安保体制
(「日米同盟」関係)のことです。
この体制は長く、戦後日本の「軽武装・経済重視」路線
=「吉田ドクトリン」を形成したと評価されてきました。
しかし、「サンフランシスコ体制」には負の遺産がある、
それが
①沖縄問題
②領土問題
④日本の再軍備問題
⑤歴史認識問題
⑦親米路線と脱亜の思想
⑧日米関係の非対称性
です。「サンフランシスコ体制」は、現代社会が抱える
さまざまな国内問題、国際問題につながる起因を生み出したのです。
(第5回学習会「日米関係史から安保体制を考える」 2016年4月16日)
● 今後、日本の外交政策の基本をアメリカが決めるという流れが
加速されるでしょう。
ジョン・Wダワーとガバン・マコーミック著の
『転換期に日本へ-「パックス・アメリカーナ」か「パックス・アジアか」』
NHK新書出版を読んでみてください。
現在の日米関係がひも解けます。
■ 選挙
8 投票行動の決定要因
投票行動の決定要因には、「社会的属性(性別、年齢など)」、
「政党支持」、「争点態度」、「業績評価」などがあります。
このうちもっとも規定力が強いのは「政党支持」要因です。
しかし政党支持とは異なる政党に投票する逸脱投票の存在や
政党支持層なしの動向によって選挙結果が変動することがあります。
こうした変動をもたらすのが選挙争点や首相・政権に対する
業績評価です。
そこで、選挙争点の設定が、選挙戦を主導するために重要になります。
9 近年の選挙
高まっています。
また、内閣支持率は、2015年秋以降、支持・不支持の固定化・二極化に
進んでいると考えられます。
近年注目されるのが、無党派層の動きです。
有権者の30~40%を占める無党派層のうち20%近くは政治に無関心で、
投票に行かない(と思われる)層です。
その残りの無党派層の人々の投票行動は、明確な争点がない場合、
選挙の勢いを強めることはあっても、選挙を動かすものには
なりづらいそうです。
そこで、「山が動く」ような選挙のポイントは、逸脱投票となります。
それは、選挙の争点と有権者の関心とが合致しながらも、
政党間の意見にはっきりとした違いがある場合におきます。
(第6回学習会「安全保障問題と有権者意識」 2016年6月5日より)
■ 投票するということ
以上が学習会の報告です。
第1~5回の学習会からは、「今」が戦後日本社会の
大きな転換点あることがわかります。
固定化していることが明らかになりました。
それは、先の見えない時代の中で、現代人が「変化」を恐れ、
異なる他者との交流を拒絶しようとする姿を現しているのかもしれません。
しかし、少なくても「現状維持がいい」という考えを持っているなら、
与党に投票するのは、上の学習会まとめからも「違う」ということが
わかると思います。
それは、与党の示す方向に社会を進めることへの支持です。
なぜなら、各政党の得票は「政党支持」を表し、
それは「政策支持」を意味すると解釈されるからです。
「投票するということ」が、自分の意思はどうであれ、どうみなされるのか。
それを自分自身に突きつけ、考えるための、あと1週間となります。
見えない未来に不安を思うのではなく、新しい未来を築くことへの
希望を持ち続けるための力に、この「学び」がつながることを
信じたいと思っています。