TMSNCUのブログ

「複眼的に安保法制を考える名市大院生有志の会」のブログです。

名市大学祭「歯ミガキするように社会のことを考えよう!」(報告)

名市大学校祭に、宇宙一有名な吉本芸人がやって来た!!

 

1、11月14日、名市大学園祭イベントとして

「吉本芸人おしどりマコさん、ケンさんの笑えて役立つトークライブ!!

歯ミガキするように、社会のことを考えよう!」が開催されました。

 

みなさんは「マコさん、ケンさん」ご存知ですか?

イベントお知らせビラには「マコさんとケンさんの夫婦コンビ。ケンさんは針金や

テルミンを操り、パントマイムダンサーとしてヨーロッパの劇場でご活躍。

マコさんは鳥取大学医学部生命科学科を優秀な成績で中退され、その後アコーディオ

ン流しを経て芸人に。ケンさんがマコさんにぞっこんになり(途中省略)

今や宇宙一有名なコンビに。」

「お二人は、福島第一原発事故などの取材で大活躍されており、海外でも大注目され

ている新時代のジャーナリスト(兼芸人さん)です。」とありました。

お二人は一体どのような方なのか、芸人なのか、ジャーナリストなのか、

はたまた…と、お二人を知らない人にはなかなかイメージがしにくかったのでは

ないでしょうか。

ただし、お二人を見れば一目瞭然!

「芸人さん兼ジャーナリスト」の説明がぴったりです。

肩書きが持ついろんな“常識”にとらわれている自分に気づくことができると思います。

会場には“老若男女” 、幅広い参加者約150人ほどが集まっていました。

 

2、原発事故で感じた疑問…

吉本の芸人であるお二人が「ジャーナリスト」として活動を始めたきっかけは

4年前の東日本大震災福島第一原発事故

当時、東京では政府・マスコミの「安全」報道にも関わらず、多くの“力のある(情報

力、権力、財力など)人”たちは東京を離れていました。

某大企業は東京本社を3月末まで関西に避難させていた、逃げていないのは“力のない

人”だけだったのです。

また、「30km圏外なら大丈夫」や「レントゲン放射線量よりも少ないから大丈夫」と

いった報道に、大学で放射能の危険等を学んでいたマコさんは疑問を感じました。

例えば、放射能は上空で雲に吸収され「黒い雨」となります。つまり放射能からの

“安全”は距離ではなく、風向きが重要なはずだということです。

「何も確かな情報はない」、そう感じたマコさんはそれから4年間、毎週東京電力

原発事故に関する記者会見に通い、作業員の方にも取材を重ねてきたそうです。

現在、福島第一原発では1日7000人の作業員の方が働いているそうです。

原発事故は何の利益も生みださないとマコさんは話されました。飯館村に放置されて

いる除染された土壌の入った「トン袋」は村だけで90万袋…、東京電力が今の時点で

支払った賠償金は5兆円を超え、これが今後どこまで増えるかは見通しが立たず…、

高速増殖炉もんじゅ」はその維持に1日5500万円、すでに1兆270億円が投入され…。

(「もんじゅ」に関する11月2日発表の「課題と対策」資料によると「同じようなミ

ス、経験不足、約束が実行できない、長年染み付いた悪さ処」が課題だそうです。)

 

3、活動の幅を広げる二人

経済・国益を優先し人々を切り捨てる、そんな構造は原発事故だけではないと感じた

お二人は活動の幅を広げていきます。原発事故被害は「公害」であり、人々が救われる

ためには必ず医療裁判の形になる。そう教えてくれた弁護士の方のつながりで水俣病

訟に関わり、また、辺野古基地問題を知るために名護市役所までアポなしで突撃取材し

たそうです。

今、辺野古基地建設現場周辺では海と陸から反対運動が続けられています。

反対派の人の船が転覆させられ救急車で運ばれることもあり、反対運動は“命がけ”とも

いえるそうです。一方、賛成派には国から海の監視員としてのバイト代が出

ています。

4年間「自分の知りたいことを知る」として活動してきたマコさんは、2013年それまで

との状況の変化を感じたそうです。それは民主党政権から安倍自民・公明党連立政権

変わった頃です。

原子力規制庁(安全委員会・保安院)のメンバーが総入れ換わりし、原発作業員の被ば

く量は個人情報として公表されなくなりました。

2015年9月には環境省が「放射性土壌の再生利用」の方針を発表。除染された放射性土壌は今後道路や宅地の造成に使われていくことになります。

マコさんとケンさんの名前は2013年に国家公安調査庁のリストに掲載され、公安職員が

お二人を張りつきでチェックしていることもあるそうです。

「危険を感じないわけではない」とマコさんは言います。

ですが、知りたいと思い、“想定外”に動き続ける。あるのは「ガッツ」だけ。

それでもそれによって何かが動くと信じて活動し続けていくとのこと。

そうしたらなんと、今年3月原発作業員の方の手紙をローマ教皇フランシスコに届ける

ことができ、さらに5月には教皇から返事を受け取ったそうです。

一人の好奇心が世界を変える、そのことを実感できたそんなお話でした。

 

 

 第二部は大学生による質問コーナーです。

Q1 原発事故後の福島県産農産物を食べる?食べない?について、

  地元の人々はどのように考えているか?

A1 2011年3月~5月はまだ放射線量が測定されていなかったが、現在は多くが測定され

低い数値。ただし、安全基準値の変更もあり、“絶対”はない。放射線量が高そうなもの

と低そうなものの傾向があり、それらを知っておくことは大切。

食べ物の放射線量は食卓全体で考えるべき。危険か安全か、食べるか食べないかについ

ては地元の人も分かれている。

また、生産者を応援するのは消費者ではない、という考え方も大切。

生産者を支援する政策をするのは政府の仕事。

 

Q2 報道に不信感を感じてしまうが、どのように報道に向き合っていけばいいのか?

 

A2 例えば、英字新聞を見るなど。東京電力ツイッターでさえ、日本語と英語では

その内容を変えている。

 

Q3 結局、国家権力にはかなわない、といった虚無感などは感じないか?

 

A3 私たちは神戸の震災も経験し、人は必ず死ぬ、ということを実感している。

日常の心配は些細なもので、多分できる、と思っている。

また「遠くで誰かが虐げられている」のは「きっと自分だ」と考えている。

誰かを助けるはいつかきっと自分に回ってくる。空しくなるときは

“やけ勉(強)”する。

 

Q4 平和や反原発は理想論だと言われるし、反対派にも意見はある。どうする?

 

A4 いろんな考えの人と楽しく話すテクニックを身につける。

議論のポイントは相手の言葉を使ってひっくり返す。で、やっぱり勉強する。

 

当り前のように、芸人でありながら「今、自分が生きている社会・政治のことを考え

る」。それがマコさん、ケンさんでした。

政治家やジャーナリストだけが政治のことを考えるのではなく、私たち一人ひとりが

考え動いていく、しかも“想定外”に。そのことの大切さを強く感じたイベントでした。